スウェーデンボルグの「再生の心理学」

書誌事項

タイトル別名
  • Swedenborg's"Psychology of Regeneration"
  • スウェーデンボルグ ノ サイセイ ノ シンリガク

この論文をさがす

抄録

エマヌエル・スウェーデンボルグは, およそ55歳のとき, 科学者から神学者に転身した著名な神秘主義思想家である。彼の聖書解釈である最初の神学著作『天界の秘密』は, 以後の神学宗教思想の基礎をすえたものである。それは膨大な書物であるが, 本稿の目的は, このうちでも「創世記」 冒頭(とくに第1 ・2章)での彼による解釈に焦点を絞り, それを彼独自の「再生心理学」 として捉え直すことにある。「再生」とはキリスト教的な新生や聖化を意味するが, 彼の立場はこうした神学的教理よりも, むしろ現代の「自己の全体性の統合」 や「自己実現」を扱う心理学派の考えに近接するものである。彼の聖書解釈は, 字義や歴史的意味の背後に, 内なる霊的意味を探る試みである。彼は「創世記」 の中に, 科学的・歴史的・比較宗教学的・文献学的な捉え方を超えて, 人間の精神が普遍的にたどる漸次的な成長過程を主題とする, 古代のいわば「宗教心理学」を読み取ろうとした。本稿では, 他の聖書解釈や近世・近代の哲学の人間理解とも対比させつつ, スウェーデンボルグの思想の独自性を浮彫にしたい。

収録刊行物

  • 研究紀要

    研究紀要 22 133-148, 1991-01-31

    文化女子大学研究紀要編集委員会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ