月光を浴びるパリの庭,そして廃墟 : プルーストの小説におけるパリの一側面

書誌事項

タイトル別名
  • The Gardens of Paris and Its Ruins : A Side of Paris in Proust’s Texts
  • ゲッコウ オ アビル パリ ノ ニワ ソシテ ハイキョ : プルースト ノ ショウセツ ニ オケル パリ ノ イチソクメン

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抄録

『失われた時を求めて』の,月光を浴びるコンブレーの駅前大通りとゲルマント大公家の庭の描写には,オートゥイユの散歩の記憶や,著名なコレクターだったグルーの自宅にあった「ユベール・ロベール風」の庭の記憶が隠されている。また,コンブレーの駅前大通りには,ユベール・ロベールが設計したという伝承のあるモンソー公園の記憶も紛れ込んでいるかもしれない。シャン= ゼリゼの庭の描写にもモンソー公園の記憶が認められる。ところで,小説の作者プルーストとその話者の生活圏は,モンソー公園のあるモンソー平原からシャン= ゼリゼを通ってボワ・ド・ブーローニュにいたる,オスマンが築いた「新しいパリ」である。このサン= トーギュスタン教会に象徴される「新しいパリ」は話者にとっては醜い街なのだが,ピラネージの古代ローマを想起する限りにおいて美しい。月光を浴びるモニュメントが古代都市を想起する限りにおいて美しい。ユゴーが『凱旋門によせて』で書いたように,パリには廃墟になるための時間が必要だが,その時間がなくとも,月光がすでにパリに廃墟を現出している。

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