ジョージ・A・バーミンガムの小説『宥和策』:報われた「善意」と、「宥和策」が意味するもの

書誌事項

タイトル別名
  • ジョージ ・ A ・ バーミンガム ノ ショウセツ 『 ユウワサク 』 : ムクワレタ 「 ゼンイ 」 ト 、 「 ユウワサク 」 ガ イミ スル モノ
  • George A. Birmingham’s Novel, Appeasement:“Good Intentions”Rewarded at Last, and What“Appeasement”Implies

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抄録

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アイルランド小説 ユーモア 戦争 善意 宥和策

ジョージ・A・バーミンガムの『宥和策』(1939)は、第2次世界大戦の危機が迫り来る1938年、イギリス南西部の架空の田舎町チャンプフラワー・キャノニコラムを舞台にしたユーモア小説である。原始的で非衛生な村の環境改善を提案するフィリップ・チャロナーと、一切の改善を望まない村人たちの間で対立が起こる。フィリップも村人たちも基本的には「善意」を持っている。村の平和維持を切望するポンソンビー司祭は数々の宥和策を試みる。それは数多くの苦難を経て実を結び、フィリップと村人たちは和解に達し、彼らの善意は報われる。この小説には、善意に対するバーミンガム自身の信奉と、人間同士の宥和のためにはユーモアの精神が不可欠という彼の信念が見られる。同時にこの小説は、ネヴィル・チェインバレンのドイツに対する弱腰な宥和策を批判していると考えられる。『宥和策』は、人間同士の対立の解消と和解に対するバーミンガムの真摯な願望をユーモアという形で表現した、意義のある普遍的価値を持った小説である。

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