審査論文 隠された脅威 : 大航海時代の魔女シコラックス

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タイトル別名
  • A Hidden Threat : A Witch Sycorax in the Age of Discovery
  • シンサ ロンブン カクサレタ キョウイ : ダイ コウカイ ジダイ ノ マジョ シコラックス

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抄録

40019736753

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エリザベス朝とジェイムズ朝の日誌や旅行記を読み解きながら、『テンペスト』における他者の表象を、キャリバンの母シコラックスを中心に考察する。『テンペスト』では、大航海時代、イングランド植民地計画に関わる航海記に刺激を受けて、南北アメリカの他者インディアンの脅威を征服する男性性が描かれている。『テンペスト』はパストラル・ドラマの枠組みを持ち、その中で男性性は古典的な魔術の世界と平行しながら、新世界発見と成功のテーマを展開している。この劇では、こういった新世界を築く男性性に対して、ギリシャ・ローマ神話に繋がる北アフリカの古典的な他者、邪悪な子を孕むシコラックスが対置されている。その隠された存在は、不在であるがためにパストラル・ドラマの枠組みを逸脱してしまう。舞台上で、母体である女性性が男性性への脅威となって立ち現れ、その脅威に対する不安がこの劇全体を支配していることがわかる。

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