日本の健全育成の概念の再検討 : 権利基盤型アプローチに着目して

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タイトル別名
  • Re-examination of Child Healthy Upbringing Concept of Japan : The Focus on the Rights-Based Approach
  • ニホン ノ ケンゼン イクセイ ノ ガイネン ノ サイケントウ : ケンリ キバンガタ アプローチ ニ チャクモク シテ

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抄録

本研究では、日本の健全育成の概念を再検討することにより、その固有性を明らかにした。健全育成政策の動向を整理すると、日本では健全育成の概念整理が十分ではなく、健全育成という用語の意味合いについては、普遍的な概念として使用されていないことがわかった。一方で、健全育成の概念を再検討する視点として、子どもを能動的権利の主体と捉える考え方(権利基盤型アプローチ)と、子どもを受動的保護の対象として捉える考え方(ニーズ対応型アプローチ)があることがわかってきた。UNICEF(国連児童基金)のイノチェンティ・リサーチ・センター(UNICEF Innocenti Research Centre)は、「子どもにやさしいまち」(Child Friendly Cities=CFC)の視点から、子どもの能動的権利の実現という観点からの権利基盤型アプローチを提唱し、OECD(経済開発協力機構)は、早期の子ども期から公的資金の投入を維持・強化していくことなどを提言している。日本の場合は、私的支出を基盤としながら、子どもの保護によって進められるニーズ対応型アプローチに近いものと思われる。子どもを受動的保護の対象とするニーズ対応型アプローチによる政策をとる日本の健全育成は、国際的に見ても固有の概念であることがわかる。ニーズ対応型アプローチから権利基盤型アプローチへの変容は、普遍的な健全育成の概念の形成に寄与する可能性があり、日本の健全育成の向かうべき方向性として示唆されるものであると考えられる。

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