『日陰者ジュード』における2人の「ヴィクトリア朝的」女たち --アラベラとスーの再考--

  • 永盛, 明美
    京都大学大学院人間・環境学研究科共生文明学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Two "Victorian" Women in Jude the Obscure --A Reconsideration of Arabella and Sue--

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説明

トマス・ハーディの最後の長編小説『日陰者ジュード』(1895)は, 「センセーショナルな」作品というレッテルを貼られ, 激しい非難を受けた. そうした非難によって, ハーディが小説家人生に終止符を打つことになったのだと一般的には信じられている. この物語には, 二人の重要な女性キャラクターである, 主人公ジュードの従妹であり事実上の妻であるスー・ブライドヘッドと, 彼の法律上の妻アラベラ・ドンが登場する. 「本書は, 全てがコントラストをなしている, 或いは, 元来の着想においてはそうであるよう意図されたものである」(Hardy, Life 281)と筆者自身が友人へ書き送っているように, 二人の女性キャラクターもまた「コントラスト」をなす存在であるが, 多くの研究において, アラベラは「肉(flesh)」の具現化された姿であり, スーは「霊(spirit)」のそれであると指摘されてきた. しかしながら, こうした『ジュード』に関する研究のほとんどが主としてスーについて検討しているために, アラベラについては看過されているということは否定できない. それゆえ本稿は, スーとともにアラベラを捉えなおすことで, 彼女たちが, 単なる「肉」と「霊」の象徴ではなく, 当時のフェミニズム・ムーヴメントと慣習的な考えとを反映した「コントラスト」をなす存在であることを論じるものである.

収録刊行物

  • 人間・環境学

    人間・環境学 27 255-266, 2018-12-20

    京都大学大学院人間・環境学研究科

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