パーキンソン病モデルラットにおけるグルタチオンのドパミン神経終末再生効果の研究

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タイトル別名
  • Effect of Chronic Glutathione Administration on Striatal Dopaminergic Terminals in Intrastriatal 6-Hydroxydopamine-Treated Rats

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抄録

40020890402

Many reports have shown that abnormalities in glutathione are related to the onset of Parkinson’s disease. Therefore, the ameliorating effect of glutathione in an animal model of Parkinson’s disease was studied. The model was made by injections with 6-hydroxydopamine (6-OHDA) into both sides of the striatum. In this model, dopaminergic terminals in the striatum gradually regenerate after an initial degeneration. The amount of tyrosine hydroxylase, which is a marker of dopaminergic terminals, in the striatum after glutathione (100 mg/kg, intraperitoneally) administration twice a week for 8 weeks was compared with vehicle-treated 6-OHDA-treated rats. No significant differences were observed between the two groups. Thus, glutathione does not affect dopaminergic terminals.

パーキンソン病治療薬としては,L-DOPAなどのドパミン補充薬などが広く使用されているが,疾患自体を治す薬物,いわゆるdisease-modifying drugは存在しない。このような難病の場合,患者心理に付け入る健康食品の類は後を絶たない。グルタチオンは薬物中毒などに処方される医薬品であるが,その還元作用,スーパオキサイド除去作用から,老化防止作用を期待して健康食品としても売られている。一部の医師はパーキンソン病の進行を抑制すると信じて,自費診療しているがその裏付けとなる論文は存在しない。そこで,パーキンソン病モデル動物を使用してグルタチオンのドパミン神経への作用を検討した。 パーキンソン病モデルとしては,ドパミン神経が徐々に逆行変性し,その後,sproutingによりドパミン神経終末が徐々に回復する6-ハイドロキシドパミン線条体投与ラットモデルを採用した。6-ハイドロキシドパミンは12μgを線条体に直接投与した。グルタチオンは6-ハイドロキシドパミン投与の3日後から週2回,100 mg/kgを8週間,腹腔内投与した。コントロール群は生理食塩水を投与した。8週後に線条体を取り出して,SDS-PAGEでチロシン水酸化酵素を分離し,免疫ブロットを行い,チロシン水酸化酵素量を両群で比較した。チロシン水酸化酵素はドパミン神経終末のマーカーとして利用した。結果は両群で全く差がなかった。 グルタチオンはスカベンジャーなので,酸化による組織障害を抑制できる可能性はある。しかし,パーキンソン病におけるドパミン神経変性の機序として,酸化説はあるがはっきりとはわかっていない。また,そもそもグルタチオンが脳内に入るかどうかもはっきりとはしていない。健康食品,民間療法の疾患改善効果をすべて否定するわけではないが,今回の実験プロトコルではグルタチオンの効果は否定された。パーキンソン病の患者は,症状に対する精神状態の影響が強く,そのためプラセボ効果が強く,治験の難しさが指摘されている。グルタチオンの場合も患者へ効果を証明するたまにはダブルブラインドなどのエビデンスの高い臨床治験が必要と思われる。また,条件を変えた動物実験も行うべきかもしれない。

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