悲嘆夢からみた喪の作業--現代の夢理論から

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タイトル別名
  • ヒタンム カラ ミタ モ ノ サギョウ ゲンダイ ノ ユメ リロン カラ
  • Mourning work seen in grief dreams: a discussion based on the modern theory of dreams

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type:論文

本論文の目的は,喪(mourning)における心理的課題と悲嘆夢との関連を検討することにある。とりわけ,故人との関係性が喪の過程でいかなる変転を遂げるのか,悲嘆夢を通じて明らかにする。予備的作業として,まず現代の知見に拠って夢の問題解決的機能や夢解釈上の留意点について論じた。つぎに喪の眼目は単なる脱愛着ではなく,故人との生前の関係が新たな継続的関係へと再編成されることを指摘した。その後,悲嘆夢と喪の課題との関連を検討し,悲嘆夢の体験は,喪失の現実を受け容れること,悲痛の感情と折り合いをつけること,故人のいない環境に適応すること,故人との内的関係を再定義すること,といった課題の解決に資することを示唆した。対象関係の変容については,故人との関係性は夢の場所的設定に反映し,此岸,境界,彼岸の3段階を経ることが分かった。最後に航空事故によって夫を亡くした女性の事例をとりあげ,悲嘆夢が生と死,在と不在,喪失と再会,過去と未来といった観念上,相容れない二項対立をひとつに包容しながら,いかに精妙に喪の課題に取り組むかを例示した。

収録刊行物

  • 天理大学学報

    天理大学学報 60 (1), 19-78, 2008-10

    天理大学学術研究委員会

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