日本語母語話者と日本語学習者の使用表現の差異の分析 : 日本語教育への応用のために : 「大丈夫です」「~ぐらい」「かぶる」を中心に

書誌事項

タイトル別名
  • ニホンゴ ボゴワシャ ト ニホンゴ ガクシュウシャ ノ シヨウ ヒョウゲン ノ サイ ノ ブンセキ : ニホンゴ キョウイク エ ノ オウヨウ ノ タメニ : 「 ダイジョウブ デス 」 「~グライ 」 「 カブル 」 オ チュウシン ニ
  • ニホンゴボゴワシャトニホンゴガクシュウシャノシヨウヒョウゲンノサイノブンセキ : ニホンゴキョウイクヘノオウヨウノタメニ : 「ダオジョウブデス」「~グライ」「カブル」ヲチュウシンニ
  • An Analysis on the Difference of the Expressions between Japanese Native Speakers and Learners of Japanese, for Application to Japanese Language Teaching : Focusing on daijoobu desu, gurai and kaburu

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抄録

type:論文

日本語教育で導入される表現には,動詞の可能形にかかわる,いわゆる「ら 抜きことば」のように,実際の日本語の使用との違いが見られるものも少なくない。 本稿では,①日本語学習者が教材において目にする表現と日本語母語話者が実際に用 いる表現にどの程度の差異が見られるか,②新しく見られるようになった意味・用法が, 日本語学習者にどの程度浸透しているか,を見るため,「大丈夫です」「~ぐらい」「か ぶる」という語を取りあげ,日本語母語話者,日本語学習者の双方への記述式調査をも とに,これらの語がどのように用いられているかを考察する。 「大丈夫です」は,従来の用法から拡張され,さまざまな語に取って代わっていること が指摘されている。本稿の調査では,買い物の際に「おはしおつけしますか」という店 員の問いに対して「不要である」ことを伝えるのにどのような表現を用いるかを尋ね, 従来用いられてきた「けっこうです」「いりません」などに加えて「大丈夫です」という返答がどれぐらい行われるかを見た。 「~ぐらい」は本来,だいたいの数量を表す語であるが,最近は「3時ぐらい」「9月ぐらい」のように,だいたいの時刻・時期を表すのにも用いられるようになった。本稿では,「だいたい9時」をどのように表すかを問い,これまで用いられてきた「9時ごろ」に加え「9時ぐらい」という表現を用いる割合を見た。 「かぶる」は「帽子をかぶる」のように,「(動作主は)~をかぶる」という文型で「(動作主の)頭になにかをのせる」ことを表すが,最近は「A が(B と)かぶる」の形で「(A とB が)重なる」の意味でも用いられるようになった。本稿では「かぶる」という語を与えられてこの「重なる」の意味を想起するかどうかを,「かぶる」を用いて作例してもらう設問をもとに確認した。 調査の結果,日本語母語話者,日本語学習者ともに,「大丈夫です」「~ぐらい」においてはより新しい意味・用法による表現を用いた回答が三分の一を上回った。「かぶる」については日本語学習者において,「重なる」の意味での使い方がまだ十分に浸透しているとはいえないことが見てとれた。 また,今回の調査では,日本語学習者における新しい意味・用法の定着には,日本語学習歴や日本での生活歴との明確な関連は見出せなかった。 本稿の考察結果は,日本語教育の現場で導入される表現と実際に用いられる表現の差異をもとに,いかにして学習者の日本語能力の向上につなげるかを模索する一つの手がかりになるものと考える。

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