「紅花絵巻」を読む

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抄録

論文(Article)

最上川舟運の流通品目の筆頭にあげられるのが青苧と紅花であり、江戸時代の出羽山形の特産品として名をなした。昨年度、本研究誌においては青苧を取りあげたのに続いて、本年度は紅花について焦点を当てることにする。ところで、紅花の作業工程を題材にした絵画資料は山形県内に三点残されている。一つは、狩野派絵師青山永耕筆の「紅花屏風」(六曲一双)である。青山は現山形県東根市六田出身であり、文化一四年(一八一七)から明治十二年(一八七九)年の間に活躍した画家である。本屏風は幕末頃に描いたものと考えられている。もう一つは、京都四条派絵師横山華山筆の「紅花屏風」である。この屏風は、前半双が文政六年(一八二三)の武蔵国(埼玉県)、後半双は文政八年の奥(一八二五)州大河原金ヶ瀬(仙台市)を描いている。さらにもう一つあげられる。作者不明の「紅花絵巻」である。描かれたのは江戸時代であろうが、来歴も不詳であり絵画技法的にも高い水準とはいえない。個人蔵であり普段は人の目にも触れない。ゆえにこれまでは本格的考察の対象からはずされてきたきらいがある。そこで、本稿ではあえて「紅花絵巻」を考察の対象として選び、紅花づくりの作業工程を他の二つの紅花屏風と比較しつつ検証してみた。あわせて、そこに描かれる人々の生身の姿、農村生活の一断面がどのように描かれているかを述べたものである。(「はじめに」より)

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