各種桑園における条桑刈取機の性能比較と改善

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  • カクシュ ソウエン ニ オケル ジョウソウ カリトリキ ノ セイノウ ヒカク

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抄録

年間を通じ,桑収穫の機械化を目的とし,株下げ,捕植などによる各種桑園(しんいちのせ)における桑の生育・収穫量の推移を調査する一方,条桑刈取機5機種とその改良機2機種を用いて,蚕期別収穫における機種別性能調査及び一,二の機種について結束機の装着と,さらに搬出車のけん引による作業能率の向上について検討した。また,機械収穫のための桑園形態及び桑の栽培について若干の考察を試みた。それらの概要は次のとおりである。1.普通桑園(2.5×0.5m,9年)を改造した多植桑園の成育と収穫条桑量の年次別推移1)株下げ・捕植により改造した多植桑園の収穫条桑量は捕植株の収穫量による影響が大きく,夏切桑園に比べて春切桑園でまさる傾向を示したが,捕植法との関係では,畦間中央の捕植が寄畦捕植に比べてやや多収を示した。また普通植えと横伏せでは前者がやや勝った。2)改造した多植桑園における3か年間の収穫条桑量は,無改造区桑園及び新植桑園の収穫量より勝り,改造効果が認められた。作業能率は一畦刈りで勝り,また集積台を搭載した効果が表われた。であり,捕植当年の管理が重要であることが推察された。2.各種桑園における条桑刈取機の性能比較 市販されている条桑刈取機5機種とその改良機2機種を用い,各種桑園において蚕期別に収穫調査を行った。1)既設の多植桑園(2.5×0.5m)において春蚕期の茎部伐採収穫を4機種(バインダMK-35型,条桑刈取機H型,CH型,TZ型)により行った。条桑1tの刈取りから株直しまでに要した時間は,TZ型が4.09時間,MK-35型が5.14時間と短く,H型及びCH型が7.70時間であった。2)改造による多植桑園(1.25×0.5m)において春蚕期の基部伐採収穫をCH型及びTZ型機を用いて行った。刈取り時間には差が少ないが株直しに大差が生じた。3)改造による多植桑園(畦間捕植,寄畦捕植)において,夏蚕期の中間伐採をH型,集積台を付けたCH型(CHK型)及びTZ型を用い,一畦刈り,往復刈りとして行った。作業能率は一畦刈りで勝り,また集積台を搭載した効果が表われた。4)既設の多植桑園における晩秋蚕期の基部伐採収穫を,CHK型,ウエイト調整を行ったTZ型(TZK型)及びDL-1型の3機種により行った。刈取りから搬出までの作業時間には,各機種の刈取りに要した時間の差が表われ,CHK型で短く,DL-1型が最長であった。5)普通桑園の春蚕期における基部伐採収穫をH型,CH型及びTZ型により行った。条桑1tの収穫と株直しに要した作業時間は,多植桑園の場合に比べてやや短縮された。この傾向はTZ型において特に顕著であり,畦間の広いことが諸作業を容易にすることを示唆した。6)普通桑園の晩秋蚕期における中間伐採収穫を,CHK型,TZ型及びDL-1型により行った。刈取りから搬出までの作業時間は,DL-1型で長く,特に往復刈りの場合にそれが顕著であった。3.条桑刈取機への結束機の装着と作業能率の向上 条桑刈取機TZ型への結束機の装着と搬出車のけん引による作業能率 自脱コンバイン用結束機(ヤンマーCB1300型)を条桑刈取機(TZ型)へ装着し,刈取りから結束,搬出までの作業を自動化した。この試作機(条桑刈束機)にリヤカー改良による搬出車をけん引させて,普通桑園における春蚕期の条桑収穫を行った結果,条桑1tの刈取りから搬出までの作業時間が1.10時間程度と,TZ型の約3倍の能率となることが明らかになった。なお,1束の重量は平均約4kgであった。4.蚕期を通じた高能率桑収穫体系の策定について若干の考察を試みた。

収録刊行物

  • 蠶絲試驗場彙報

    蠶絲試驗場彙報 (134), 149-172, 1988-08

    つくば : 農林水産省蚕糸試験場

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