ブドウ浜崎系‘巨峰’ウイルス無毒樹における高品質果実の安定生産技術の確立

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抄録

ブドウ浜崎系‘巨峰’ウイルス無毒樹の結実及び果粒形質向上の方法として下記のことが判明した。 1.第2花房は第1花房に比べ,1粒重は軽い傾向にあるが,有核果粒率が高いことから,第2花房を利用すると生産が安定する。 2.第2花房のみを整房し,第1花房を放任すると,全房を整房するより着粒率が高く,省力的である。 3.花穂の利用段階は13~15段が最適である。段数が多く,大房になると有核粒率が低く,果粒形質が劣る。 4.花穂の利用部位は果粒形質には関係ないが,房締まりは下位の花穂が良い。 5.1房の粒数は果皮色,糖度,1粒重などから判断して20~25粒が最適である。果梗径の大きい果房は大粒になる。 6.手かきによる整房法は,従来の鋏かきに比べ処理の所要時間が1/6に短縮され省力的である。 7.ウイルス無毒樹の結果母枝の各節部からの萌芽を促進させるには芽傷処理とメリット青2倍液塗布処理の併用が最も効果が高く,萌芽が無処理の約2倍で,芽傷単独処理がそれに次いで効果が高い。 8.冬季に発生する枯れ枝は徒長した枝やその二次伸長枝に発生するのではなく,そのすぐ下の下位枝に発生する。すなわち,上位枝が強大であると下位枝が充実不良となり枯死部が生じる。 9.開花期から摘粒期までの間に新しょうの伸長が著しいと着粒率が低下する。開花初期に長さ21~50cmの新しょうは,着房した果房の有核粒率が最も高い。 10.高品質果粒生産のための1果房当たりの満開期の葉数は16枚程度が最適である。 11.7葉期の新しょうに対するフラスター液剤区500倍散布区の着粒率は誘引や摘心と同等で,1粒重が重く,果皮色が優れていることから省力的で,普及性がある。 12.萌芽時期が早い枝ほど有核粒率が高く,新しょう密度は4~5本/m2が1粒重が重く,果皮色や糖度も優れる。 13.6月に夏季せん定を連年行うと果実形質が低下することから,ウイルス無毒樹の樹体管理は芽かき主体で9月の夏季せん定を補完的に行うのがよい。 14.新しょう誘引の程度は全新しょうを誘引するより,25cm以下の着房枝や無果(花)房新しょうなどは誘引せず,25cm以上の着房枝を誘引する方法が最良の樹相を示し,果皮色,1粒重,糖度が優れている。 15.展葉期から7~8枚葉期のメリット青液剤500倍液散布は新しょうを早期に伸長させ,開花期以後には新しょうの伸長が停止し,花振るいを低下させる。このことが有核粒率,果粒形質を向上させる。 16.着粒後に新しょうを摘心し,副しょうを2芽摘心すると果粒肥大が促進される。 17.7月中旬に枝長が150cm以上あるような結果枝は12節より先端を下垂させるたり,12節と13節の間でせん定すると無処理に比べ,1粒重が重くなり,翌年度の着穂率,有核粒率や登熟率が高くなる。また,登熟率の高い結果母枝ほど翌年の萌芽率,着穂率,有核粒率が高く,糖度は高くなる。 18.前年秋に二次伸長した結果母枝は二次伸長しなかった結果母枝に比べ萌芽時期が遅く,有核果率は低く,1粒重は軽く,果皮色や糖度劣る。 19.収穫15日後までのエルノー液剤200倍液散布は結果枝の二次伸長を抑え枝を充実させ,散布樹の翌年の萌芽率,着穂率,有核果粒率や糖度,果皮色を向上させる。 20.台木用品種の挿木苗の生育状況とわい化度との関係は明瞭な関係を認めなかった。台木用品種の挿木苗の生育はウイルス無毒苗がウイルス保毒苗より生育が旺盛である。 21.台木用品種に接ぎ木した浜崎系‘巨峰’ウイルス無毒樹の生育状況は台木用品種のわい化度が低くなるに従って生育が旺盛である。果粒形質は‘グロワール’台に接ぎ木した樹が最も果皮色が優れ,1粒重も重く,酸含量が低く,糖度も高い。

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