横浜市平潟湾流域の魚類相と人為的環境改変

抄録

1.平潟湾を中心に連接する河川と海域に7定点を設け、1998年5月から2000年11月まで延べ131回の魚類の採集を行った。2.流域全体からは未同定種を含む43科92種、151960個体の魚類が採集された。6生活史型への類型化では、河口魚が採集数の2割強、海水魚が約8割弱を占めた。うち平潟湾では72種119000個体以上が採集され、同湾の豊かな魚類相が明らかになった。3.夏秋季に多種の仔稚魚が集中的に出現した平潟湾は、河口魚のみならず多くの海水魚の重要な保育場である。金沢湾では自然海浜の保育機能が人工海浜を上回ったが、自然海浜は地理的に平潟湾の環境をより強く受けているためと考えられた。4.1980年代後半からの野島水路の開放により湾内の海水交換が向上し、海水魚の進入による著しい種数と採集数の増加がもたらされた。その一方で、汚濁耐性が強いアベハゼが減少し、低塩分を好むビリンゴとマサゴハゼの分布域が湾内から河川内へと変化した。5.平潟湾の魚類相回復事例は、潮受け堤防により締め切られた長崎県諫早湾や閉鎖性が高い京浜臨海部の運河・水路部の環境復元へ有効な示唆を与えよう。

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