醸造用ブドウ新品種‘サンセミヨン'

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抄録

1.‘サンセミヨン’は山梨県果樹試験場において、1977年に‘笛吹’と‘グロー・セミヨン’を交雑して得られた実生から選抜した醸造用ブドウ品種である。1992年より‘ブドウ山梨34号’の系統名で全国の公立試験場所9カ所において系統適応性検定試験に供試した。その結果、2000年2月15日に‘サンセミヨン’と命名、‘ぶどう農林20号’として登録、公表された。また、2002年7月10日に第10380号として種苗登録された。2.樹勢は中程度で、新梢の伸びは良好で、太い。花穂は円筒形で複穂を有し、完全花を1新梢あたり2花穂つける、二倍体品種である。満開期は山梨市(標高440m)では5月下-6月上旬で‘甲斐ブラン’、と同時期であり、花振るいは‘甲州’や‘甲斐ブラン’より少ない。慣行防除で特に問題となる病害虫の発生は認められないが、年によって晩腐病が発生するため注意が必要である。耐寒性はやや劣り、品種特性として髄がやや太めであることから、凍寒害には注意を要する。3.果房は有岐円錐形で、大きさは390g程度である。果粒は中程度に着粒し、大きさは3g程度である。果皮は黄白色を呈する。糖度は21%と高く、滴定酸度は6.7g/lである。渋み及び香りは感じられない。4.10a当たりの収量は山梨県の試験結果から平棚栽培で1.8-2.0程度と推定される。収穫期は山梨県以西で8月下旬-9月上旬であり、裂果はほとんど認められない。5.ワイン品質は香りが華やかで、味のバランスが良くフルーティでボディがある点、また苦みが少ない点で優れている。6.耐病性及び耐裂果性を有し、栽培容易な品種であるが、寒冷地では果実が十分に熟さず、また耐寒性の点からも、北海道や本州の高標高地を除いた東北以南のブドウ栽培地帯に適する。

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