中山間地域の特定農業法人の実態と営農の方向 : 法人における構成員と世帯の構成から

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  • チュウサンカン チイキ ノ トクテイ ノウギョウ ホウジン ノ ジッタイ ト エイノウ ノ ホウコウ ホウジン ニ オケル コウセイイン ト セタイ ノ コウセイ カラ

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抄録

山口県内で先進の4つの特定農業法人の実態を明らかにするとともに、設立当初から野菜生産に取り組むU法人の経営実績に基づいて、生産拡大や加工導入の可能性を検討し、今後の営農展開方向を提示した。1.4つの特定農業法人において組織化により水稲や大豆、飼料イネの効率的生産を図るとともに、法人以外の地域内の組織により販売や交流、加工活動が推進されている。2.法人に関係する家族の年齢と構成では専業者>兼業者>農業従事しない人の順に年齢が高く、個人経営作目のない人が多い法人の地域では農業従事しない人の割合が多い。法人組織による営農を進める場合、農業従事しない人が増加することを地域世帯の家族構成により予測し、新たな農業生産やその他の取り組みを実施することが、地域世帯の農業や地域離れを回避するには重要である。3.法人事業従事者は、組織規模が大きいほど構成員に占める割合が低く、専業者の割合が高い傾向にある。しかし、生産を効率的に進めるには、法人事業従事者を専業者や兼業者で区分するのではなく、従来からある個別営農の特徴と従事者の就業状況を考慮した人員調整による作業の実施が不可欠と考える。4.構成員世帯はすべての地域で「高齢夫婦・独居の世帯」の割合が高く、家族の就業状況による世帯分類では組織規模が大きい地域で「農業従事なしの世帯」の割合が高く、農業上のつながりの弱まりが推察される。それら世帯に従事可能な家族があれば、生産活動への参加を促すことで、法人事業従事者数を確保し、現状の経営を維持する可能性が拡大する。5.法人の地域世帯家族と同様に、法人事業従事者も専業者の年齢は高く、新規の構成員がいない現状では10年後に人数は減少し、主体となる従事者は専業者から兼業者に移行する。現在、兼業者は専業者に比較して1人当たり作業従事時間の負担が少なく、将来は人数減少以上に労働力の減少が予測される。経営継続を図るには積極的に定年退職する兼業者を専業化することで、労働力の不足を緩和する必要がある。6.U法人の経営及び作業実績に基づく営農計画の評価から、現状の経営において生産拡大により最大の所得を得るには野菜作付面積を増加することが必要となる。生産拡大に加えて加工導入によって、より高い所得を得ることが可能である。この場合、豆腐加工の施設、技術者、販売先など新たな投資や交渉が不可欠であり、構成員に加工技術を有する人材が必要となる。現状の経営を将来的に維持するには、専業者が減少し、兼業者や定年退職して法人事業に従事する人が増加する将来を見越して、野菜生産技術と人材の確保、組織的な生産促進の取り組みが重要である。

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