島根県における生活改善普及事業 : ファシリテーター間と住民間の軋轢に着目して

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  • シマネケン ニ オケル セイカツ カイゼン フキュウ ジギョウ ファシリテーター カン ト ジュウミン カン ノ アツレキ ニ チャクモク シテ

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抄録

本稿では、島根県Y町における生活改善普及事業を事例として、各セクター間の「横断的な」リンケージの形成過程あるいは事業推進に伴い生起したファシリテーター間・住民間の軋轢とその調整・解消要因を解明することを主たる目的とした。聞き取り調査の結果を要約すると、次のとおりである。当初はファシリテーター(生活改良普及員と保健婦)間の軋轢・意思疎通不足もあって、末端行政組織における「横断的な」リンケージは十分に形成されていなかった。この「横断的な」 リンケージ形成に、組織面では生活改善連絡協議会などの設立が、人間関係では各ファシリテーター間の信頼関係の醸成が重要な役割を果たしたと考えられる。また、既存の社会システム(婦人会など)を受け皿組織として事業が推進されたが、その際に発生した住民間の軋轢に対して、地元の有力者が調整役を果たした。こうした分析結果を踏まえると、途上国において包括的な農村開発を実践する際に、各セクターの参加を調整する末端行政組識の整備や既存の社会システムの活用以外にも、ファシリテーター間の信頼醸成、レント・シーキングな行動をとることなく農村組織内の軋轢を調整できる人材の育成が重要であろう。

収録刊行物

  • 開発学研究

    開発学研究 21 (1), 35-43, 2010-07

    藤沢 : 日本国際地域開発学会

参考文献 (32)*注記

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