アジア原産ササゲ属マメ科植物のネオ・ドメスティケーションとケツルアズキの多器官大型化突然変異
書誌事項
- タイトル別名
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- Neo-Domestication of Vigna (Leguminosae) Species and Identification of a Multiple Organ Gigantism (mog) Mutant of Cultivated Black Gram (Vigna mungo)
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説明
我々は,マメ科作物とその近縁野生種を対象に,進化と栽培化の過程で生み出された遺伝的多様性を解明し,それを利用することを目的に研究を進めている。本稿では,アジアにおいて独立に栽培化が進行した4種のササゲ(Vigna)属マメ科作物であるアズキ,ツルアズキ,リョクトウおよびケツルアズキの栽培化に伴う遺伝変異について考察を行う。栽培化の過程で,これらの作物は,多くの器官とくに種子の大型化,裂莢性と種子休眠性の消失という共通の形質変異を獲得し,人間による栽培に適した作物となった。そこで,これら共通の形質変異をもたらした遺伝的背景を,QTL解析を行うことによって明らかにし,検出されたQTLの種間比較を行った。その結果,共通形質獲得の遺伝的背景には,種を超えて共通して利用された遺伝変異と,ある種の栽培化においてのみ利用された遺伝変異とが存在し,その数と割合は形質によって大きく異なることが明らかになった。検出したQTLのうち,形質変化への寄与率が高いものに関して,現在遺伝子の単離に向けた解析を進めている。ケツルアズキにおいては,栽培化で大型化した栽培品種へのガンマー線照射によって,さらに多器官が顕著に大型化した突然変異体(MOG:Multiple Organs Gigantism)が得られている。この突然変異遺伝子のマッピングを行った結果,本突然変異は,近縁種の栽培化過程における器官大型化には用いられなかった突然変異であることが明らかになった。本突然変異は,種子やその他の器官を約2倍に大型化する極めて作用力が大きな突然変異であり,しかも種子稔性の低下がほとんど見られないことから,産業利用上有望な遺伝子であると考えられ,単離に向けた解析を行っている。これらの研究で明らかになってきた,近縁作物では利用されなかった栽培化関連有用変異をもたらす遺伝子が単離できれば,交雑親和性がない種に対しても,化学物質や放射線照射によって誘起された変異体を用いたTILLINGによるスクリーニングによって効率的に有用変異体を獲得し,作物のさらなる改良を行ったり(Super-domestication),限界環境に適応した野生種を新規に作物化(Neo-domestication)したりできるようになると期待している。
収録刊行物
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- Gamma field symposia
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Gamma field symposia (49), 41-47, 2012-05
Institute of Radiation Breeding, Ministry of Agriculture & Forestry
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050845763671233152
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- NII論文ID
- 220000136849
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- NII書誌ID
- AA00653145
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- ISSN
- 04351096
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- 本文言語コード
- en
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles