鶏コクシジウム症と壊死性腸炎を再考する

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タイトル別名
  • Re-thinking chicken coccidiosis and necrotic enteritis in Japan
  • ケイ コクシジウムショウ ト エシセイ チョウエン オ サイコウ スル

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抄録

生産現場では鶏コクシジウム症と壊死性腸炎の発生は常に隣り合わせた状況にある。特に空回腸に寄生するコクシジウム種の感染は,同部位に好発する壊死性腸炎の発生を導く主要な誘発因子である。この概説では,密接に関連し合うこれら二つの疾病について,最近の新しい知見を中心に取り纏めて紹介する。国内のブロイラー養鶏場を対象として1970年代に実施されたコクシジウム種の浸潤状況の調査において,Eimeria brunettiは全く検出されなかった。その結果を受けて,以後,本種は極めて稀であるという認識が国内に広まったようである。しかしながら,近年の我々の調査から,本種が国内に広く浸潤していることが明らかになった。この調査では,32農場中21農場から本種が検出されたが,検出された21農場のうち20農場は種鶏場および採卵養鶏場であった。今後,特に種鶏場および採卵養鶏場において鶏コクシジウム症の発生があった場合には,本種の関わりも疑った上で検査を進めるように認識を改めなければならない。近年,Clostridium perfringensが産生する新しい病原性因子が発見された。これは壊死性腸炎の発生機序を解明する上で極めて重要な知見である。これまで,壊死性腸炎の発生はC. perfringensによって産生されるアルファ毒素が主体となって引き起こされるものと考えられてきた。しかしながら,新たに同定された膜孔形成毒素NetBが重要な役割を担っており,病変形成においてアルファ毒素は必須ではないとする研究報告がなされている。実際に,NetB毒素を産生する能力と壊死性腸炎を引き起こす能力が相関することも証明されている。ただ,日本国内の調査では,壊死性腸炎の発生事例とNetB毒素遺伝子を保有する菌の分離状況には明確な相関が認められていない。NetB毒素が壊死性腸炎の発生とどの程度,どのように関与しているのか,今後のさらなる研究の進展が期待される。

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