仙台湾の底質とアカガイ漁場について

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  • センダイワン ノ テイシツ ト アカガイ ギョジョウ ニ ツイテ

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1. 仙台湾の底質と沿岸域に形成されるアカガイ漁場の底質環境について,1953年に沿岸域の表層堆積物の粒度組成とアカガイの分布,1962年に仙台湾のほゞ全域に亘って表層堆積物の粒度組成・硬度・酸化層・色・灼熱減量・有機炭素(腐植質)・全窒素の分析調査を行なった。2. 中位粒径によって示される仙台湾の底質は,一般的に海岸線に沿って細砂・微細砂区が在り,その沖合に微細砂・シルト区が分布する。沿岸の泥線深度は12~14mである。仙台湾の中央部には粒度の粗い粗砂・極粗砂・礫区が広く分布する。沿岸域の大部を占めるシルト域は,仙台湾に流入する北上川・名取川・阿武隈川等の陸水流入域に広く発達する。3. 微細粒子の含有量,底質の硬度の指標となる採泥資料の長さ,及び有機物の一般的な分布傾向は,シルト区に分布の中心をもち,この値は粒度が粗くなるに従って減少する。4. 仙台湾内のシルト域を北上シルトA・B区,名取シルト区,阿武隈シルト区に四分する。北上シルトA区は北上川の影響を受ける有機物の比較的多い酸化軟泥域である。北上シルトB区はシルト区中の最深区で,微細粒子を集中的に堆積する,有機物の多い還元性の軟泥域である。名取シルト区は酸化層の良く発達した,有機物の多い酸化軟泥域である。阿武隈シルト区は一部に還元的様相を示す,有機物の多い酸化軟泥域である。5. 仙台湾のアカガイ漁場の範囲は,ほゞこれらのシルト区の範囲に相当する。6. シルト区に於ける各分析値の平均は,中位粒径27μ,灼熱減量10.2%,有機炭素16.52‰,腐植質28.42‰,全窒素1.40‰,炭素率11.7,酸化層の厚さ23mmである。7. アカガイの優秀漁場は,酸化的環境下で有機物の供給・分解消費が活?に行なわれている生物豊度の大きい名取・阿武隈シルト区に一致する。次いで北上シルトA区が漁場価値が高く,最も漁場価値の劣るのは北上シルトB区である。8. 仙台湾の南部沿岸域のアカガイ分布調査の結果によると,アカガイの分布は名取・阿武隈シルト区内にあるが,アカガイの分布とシルト含有率との間には関連性がない。アカガイの分布はシルト区縁辺部の泥線域に集中している。9. アカガイ漁場の生態学的な形成条件として,稚貝の集積に関係するシルトの堆積機構と泥線域の集積環境,棲息条件に関連して有機物と底土の酸化還元環境について考察した。

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