淡水鯨類(イラワジイルカ: Orcaella brevirostris)の個体数保全と生息域保全に伴う経済活動に向けた地域住民の選好 : カンボジア国クラチェ州を事例として

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タイトル別名
  • Classification of preference of local community towards dolphin conservation and ecotourism development : A case study of Kratie Province, Cambodia

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抄録

近年,メコン河に生息する淡水鯨類(イラワジイルカ: Orcaella brevirostris)の生息数は,流域の開発や汚水の流入による水質悪化の進行から,急速に減少しており,その絶滅が危惧されている。イラワジイルカ個体数回復やその生息域保全に関する問題は,単に稀少動物保護の観点に留まらず,流域住民の水資源環境の確保という観点から,流域住民においては重要な課題である。加えて,イラワジイルカは,生息地域において,重要な観光資源の一つであり,国や州,そして住民が一体となった,イラワジイルカの保護や生息環境の保全が急務となっている。本研究は,カンボジア国クラチェ州を分析対象地域として,イラワジイルカの個体数保全と生息域保全に伴う経済活動に向けた地域住民の選好に関して,潜在クラス分析を援用し,その解明を試みた。分析結果から,イラワジイルカの保護や生息環境の保全に向けた,流域住民の意識は,概ね高いことが解明された。その一方で,保全に向けた経済的負担と具体的方策,観光資源としての評価と流域住民の属性に関しては,その特徴や統一的な傾向性は明確でないことも明らかとなった。このことから,流域住民の意識は,イラワジイルカの保護や生息環境の保全については,概ね重要視しているものの,保全方法や費用負担,観光利用のあり方については,異なる見解を有していると結論づけられる。

収録刊行物

  • 農村研究

    農村研究 (118), 84-107, 2014-03

    東京 : 食料・農業・農村経済学会

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