WTO加盟後の台湾における米政策の評価

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  • Evaluation of Taiwanese rice policies after WTO accession

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抄録

類似した社会経済環境を持つ東アジア諸国と比べて、台湾の米価は高い水準で推移している。台湾の米市場がWTO加盟後も相対的に高い価格を維持してきた市場メカニズムを明らかにし、またこの価格水準が更なる関税削減が行われた際にはどのように変化し得るのかについて検討することを目的として、現在台湾で実施されている3水準の価格による政府買取制度を忠実に再現した、離散型部分均衡モデルを構築した。このモデルでは、台湾の農家が3つの政府買取価格と民間市場価格の差額を基に生産物の販売先を決める過程を、先行研究に類を見ない連立不等式体系によって表現した。分析の結果、一年二作が可能な柔軟な生産環境と、米の政府買取と転作補助金の2つの制度を併用する政府の方針が、今日までの国内米価の安定と政府負担の抑制に貢献していることが明らかになった。しかし同時に、完全自由貿易の下で現在の米自給率を達成するためには、政府買取価格の下限を現状の1キロあたり18.6台湾ドル($0.63アメリカドル)から1キロあたり20.0台湾ドル($0.68アメリカドル)まで引き上げなければならず、48億台湾ドル(1.6億アメリカドル)程度の財政負担を必要とすることも明らかになった。これらの結果から、関税率と政府買取価格の最適なバランスについて、社会厚生の観点から議論を深めてゆく必要性が指摘された。

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