バングラデシュ農村におけるオープンアクセスな資源の役割とその変容について

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タイトル別名
  • Function and changes of the open access resources in rural Bangladesh

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説明

バングラデシュは巨大なデルタに位置し,稠密な人口をもつ国である。本論文は,バングラデシュ農村において「共的」に利用される資源に注目し,二つの異なる水文環境下にある農村での事例調査をとおし,その実態を明らかにすることを目的とする。バングラデシュ農村では,ほとんどの土地は個人所有あるいは国有地であり,地域のコモンズはごくわずかである。その代わりに,国有地である湿地帯の利用は地域のコミュニティに開かれており,だれでもアクセスすることができる。さらに,雨季に広がる内水面や落ち葉,牛フン,ワラの切り株などのさまざまな“落ちている資源”は,もともとの所有者に関わらず誰でもアクセスすることができる。このようなオープンアクセスな資源は,自家の資源に乏しい世帯の生活の存続に役立ってきた。しかし,国有地は次第に民間に払い下げられるようになっている。また作付体系の変化は,オープンアクセスな資源に負の影響を与えている。他方,道路わきの植樹は落ち葉など,自己資源の乏しい世帯が利用できる資源を増やす働きをしている。バングラデシュ農村において農村開発の主流は,個人の収入創出を目的としたトレーニングとローンであった。しかし,地域資源を増やし相互扶助を力づけ最低限のセイフティネットを形作っていくような,コミュニティベースのアプローチが必要であろう。

収録刊行物

  • 農村研究

    農村研究 (119), 45-61, 2014-09

    東京 : 食料・農業・農村経済学会

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