日本系サケ地域個体群におけるふ化放流の現状

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タイトル別名
  • Status of hatchery production of chum salmon populations in Japan
  • ニホンケイ サケ チイキ コタイグン ニ オケル フカ ホウリュウ ノ ゲンジョウ

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日本系サケ(Oncorhynchus keta)7地域個体群(オホーツク,北海道日本海,根室,えりも以東,えりも以西,本州太平洋および本州日本海)の人工ふ化放流の実施体制,採卵時期,集団の有効な大きさ,稚魚放流期の沿岸水温,稚魚の放流時期や放流サイズの動向などを比較した。北日本にはふ化施設が246箇所あり,1施設当たりの平均放流数は約752万尾で,えりも以西や本州日本海地区に比較的小規模なふ化施設が多い。採卵のピークは,オホーツクとえりも以東で10月下旬,本州太平洋では11月下旬で経年変化が少ないが,北海道日本海,根室,えりも以西および本州日本海個体群では年代によって変化がみられた。採卵に用いる親魚の集団の有効な大きさ(Ne)は,北海道の5地域個体群を代表する河川個体群(徳志別川,石狩川,西別川,十勝川および遊楽部川)で概ね10,000以上を維持していた。稚魚を放流する時期の沿岸水温は,地域によって大きく異なり,北よりも南の方が,太平洋側より日本海側の方が水温上昇が早い傾向にあった。サケ稚魚の放流は,本州日本海で3月下旬,オホーツクで5月下旬に集中するのに対し,他の地域個体群では放流時期が年代によって変動していた。放流稚魚の体サイズは,オホーツク,北海道日本海およびえりも以東で大型化の傾向がみられたが,その他の地域個体群では1990年代以降ほぼ横ばいで推移していた。今後は、各地域個体群の持つ特性を十分に理解し,個体群の持つ多様性を維持しながら,生残に最適な放流の時期や体サイズなどを各個体群毎に追求していくことが必要である。

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