蛇紋岩質土壌地帯のイネとエンバクのニッケル過剰障害

書誌事項

タイトル別名
  • ジャモンガンシツ ドジョウ チタイ ノ イネ ト エンバク ノ ニッケル カジョウ ショウガイ

この論文をさがす

説明

超塩基性岩の一種である蛇紋岩質土壌におけるニッケル過剰害の特性をエンバクとイネで検討し,以下のことが明らかになった。この場合の土壌条件についても検討した。1)深成岩である超塩基性岩は地下深くから隆起してきた岩石であるためプレートの衝突地帯や火山,地震多発地帯に多く,地震,火山大国である日本にも多くの超塩基性岩帯が存在する。北海道においては稚内近くの知駒岳(北緯44°56′)から南の襟裳岬近くのアポイ岳(42°06′)まで蛇紋岩とカンラン岩の超塩基性岩地帯が点在する。中でも水分含有率の高い蛇紋岩は風化が早くもろい。さらにこれらの岩石は地殻に多いニッケルやクロム含有率が安山岩などの100倍も高いが,クロムはクロマイトなどの硬く微細な部分に濃縮されていてあまり溶け出さず,問題が無い。しかしニッケルは粘土部分に含まれるため,植物成育の障害となる。2)畑作物であるエンバクの障害は土壌中に含まれる全ニッケルの含有率とあまり関係がなく,可溶性成分である交換性ニッケル(Ex. Ni)と高い相関がある。Ex. Niは土壌pHと高い負の相関があり,pH5.0からpH7.0に上昇することでEx. Niは約1/3に減少する。したがって,ニッケル過剰の対策としては炭酸カルシウム施用の効果が顕著である。また,蛇紋岩質土壌は苦土(マグネシウム)が極端に高いため,そのバランス是正のためにも石灰施用は望ましい。3)エンバクのニッケル過剰はEx. Niが約10(mg/kg)以上で発現し,この障害程度は植物体内のFe/Niの重量比が10以下で発現し,この数値が低いほど顕在化する。4)イネのニッケル過剰は自然界で観察されないが,人為的な施用試験ではEx. Niが50(mg/kg)以上で障害が現れ,植物体内のFe/Ni比が10以下で障害は急速に進む。5)植物のニッケルと鉄の吸収は同じメカニズムで行われることが近年の研究で明らかになった。それ故,ニッケル過剰土壌において植物が鉄欠乏を補うために鉄吸収を促進するとニッケル吸収もさらに促進されるため,ニッケル過剰障害はさらに進むことになる。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ