難聴児との会話継続に有効な教師の訂正方略

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タイトル別名
  • Communication Repair Strategy of a Teacher in Oral Conversation with a Cochlear Implant Child
  • ナンチョウジ トノ カイワ ケイゾク ニ ユウコウ ナ キョウシ ノ テイセイ ホウリャク

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抄録

音声会話においてコミュニケーションブレイクダウン(以下,ブレイクダウン)が起こったときには,難聴児側の聞き返しや確かめが有効であるが,コミュニケーションは話者と相手との相互作用で成り立つため,相手側に会話継続スキルがあれば,ブレイクダウンは回避できる。この会話継続スキルを訂正方略と呼ぶ。近年,通常学級を選択する難聴児が増えており,難聴児と教師の間で音声コミュニケーションを成立させるためには,難聴児側だけでなく教師側にも訂正方略を活用する必要性があると考えられた。 そこで,本研究では,自由会話において人工内耳装用児(CI 児)がブレイクダウンを起こしたときに会話継続に有効な教師側の訂正方略を明らかにすることを目的とした。対象は,5-8歳のCI 児15名であった。方法は,対象児と教師との1対1の自由会話を遊びや給食等を話題にして行い,会話の録音記録を基に,CI 児がブレイクダウンを起こした直後に教師が用いた訂正方略をタイプ別にカウントした。訂正方略のタイプは,①要求・聞き返し方略,②繰り返し方略,③言い換え方略,④説明方略,⑤選択方略,とした。 それぞれのタイプについて会話継続効果の有無を評価し,効果のあった回数と無かった回数をカウントし比較した。その結果,要求・聞き返し方略(U =57.0,P <0.05)と短く言い換える方略(U=1.5,P<0.01)について会話継続効果があった回数が効果の無かった回数より有意に多かった。繰り返し方略,詳しく言い換える方略,選択方略については有意な会話継続効果はなかった。 以上の結果から,CI 児がブレイクダウンを起こしたときには教師のが言い換え方略が会話継続に有効であり,わかりやすいことばや文に言い換えることで,聞こえにくさばかりでなく内容理解を助けることがCI児との会話継続には有効であることが示唆された。

福岡教育大学教育総合研究所附属特別支援教育センター研究紀要

Research bulletin of Special Education Center

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