囚われる人
説明
六本木アートナイト2019 に出品した作品「囚われる人」について、準備から展示に至るまでのプロセスを報告する。「囚われる人」は、自動販売機に人が押し込められているように見える映像インスタレーションである。実際には、鉄製フレームにより構成されるケースにPCと2 台の43 インチ液晶TV、TV 前面にポリカーボネイトハモニカボードを組み込んだ装置にスタジオで撮影した映像を送出しているに過ぎない。しかし、撮影時の工夫と装置の構造を組み合わせることで、あたかもすりガラスの向こう側に人が存在するかに錯覚する効果を得ることができる。この装置を街中の自動販売機と並置することで、貨幣経済に生きる私たちを俯瞰できる機会を設けることができるのではないかと考えた。私たちは自分の時間、すなわち寿命を切り売りすることで生計を立てている。人はその中で様々な選択を繰り返し生きていて、ともすると振り回される。しかし、世界に目を向ければ選択の余地のない人々があり、劣悪な環境に生きる人がいる。信じがたいことだが、ネット上には、金銭で売買される子供たちや臓器売買の悲劇が多数報告されている。「囚われる人」は、目新しい実在感豊かな表現で目を引くが、自動販売機を貨幣経済を俯瞰するためのフレームとして捉え、少なくとも自覚を促すことを目的とした作品である。
収録刊行物
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- 芸術工学2019
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芸術工学2019 2019-11-26
神戸芸術工科大学
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050845763825392640
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- NII論文ID
- 120006767974
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles