資産負債観の説明能力 : 特別修繕引当金(1)

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筆者の研究課題は, 収益費用観・資産負債観という枠組の実相を明らかにすることであるが, 具体的には, 第1に資産負債観の導入により, 本当に会計事象の合理的説明が可能になったのか, 第2に収益費用観・資産負債観という枠組が, 本当に論理的に成立するのか, そして第3に収益費用観・資産負債観という枠組が, 測定規約においてどのような位置を占めているのか, という3点の検討を企図している。ここ暫くは, 第1の論点を取扱うことにする。もっとも, この論点についても, 検討すべき課題は多いが, とりあえず, 特別修繕引当金・製品保証引当金・資産除去債務という貸方項目, 投機目的有価証券への時価評価の導入, そして機械等への時価評価の導入のみっつのグループに分け, 逐次取り上げる。  本号から2回にわたり, まず第1のグループのうちの特別修繕引当金の問題を俎上に載せる。この特別修繕引当金は, 一般的には, 将来の修繕支出に具えるための負債性引当金と理解されているようである。こうした理解を負債性引当金説とよべば, これに対して, 評価勘定説とでも言われるべき見方が, 提唱されている。そして, 近時, このふたつの見方を, それぞれ収益費用観および資産負債観に帰属させて理解する見解も, 主張されているが, その場合には, 資産負債観が, 特別修繕引当金の説明能力に貢献していることになろう。  しかし, 筆者は, そうした見方には与しない。すなわち, 評価勘定説にしても, 実は収益費用観に属しており, その点は, 負債性引当金説と異なるところは, ない。ただ, 「特別修繕引当金」の計上にかかわる会計事象について, 負債性引当金説は修繕事象とみなしているのに対して, 評価勘定説は損傷事象とみなしている点に, 相違があるにすぎないと筆者は考えている。結論的には, 負債性引当金説は, 計算対象の理解の仕方に誤認があったのである。したがって, それを是正した損傷引当金説によって, 問題を解決し得るのである。そのかぎりで, 収益費用観・資産負債観という枠組にかかわる問題ではないというのが筆者の結論である。

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