ジェニー・エルペンベックの"Gehen, ging, gegangen"に関する一考察 : 難民問題を小説化することの意義

書誌事項

タイトル別名
  • ジェニー ・ エルペンベック ノ"Gehen, ging, gegangen"ニ カンスル イチ コウサツ : ナンミン モンダイ オ ショウセツカ スル コト ノ イギ
  • A Study on Jenny Erpenbeck's Gehen, ging, gegangen (Go, Went, Gone) : The Novelization of the Refugee Problem and its Significance

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抄録

“Gehen, ging, gegangen” はアフリカ出身の難民を題材にした小説である。難民たちはドイツに住み、働くことを望んでいる。表題は、難民たちが苦労して学習するドイツ語の動詞の変化であると同時に、彼らが余儀なくされる移動を表している。作者は事前に難民キャンプや庇護申請者用の宿泊施設を訪れるなどして、入念なリサーチをしている。 ヨーロッパに足を踏み入れる難民たちにとって、以前から多くの難民を受け入れており安全と良好な生活条件が得られるドイツは理想的な移住地である。作者の主張は、難民たちにドイツにおける滞在と就労の許可を与えるべきだということである。 作者は、難民というテーマをルポルタージュではなく小説という形で表現した。主人公は旧東独出身で定年退職したばかりの元大学教授である。この主人公が、全く無関心の状態から異文化としての難民と関わるようになり、徐々に受容していく。最後にはドイツ人と難民が一堂に会して心を通わせ、主人公は長年のトラウマから解放される。作品においては、全体を通して1本の直線としての主人公の変化の物語が語られる。そして、その周りに作者がリサーチした難民の状況、およびアフリカの歴史や文化についての報告が点として散りばめられる。 作品全体を通して、語りの視点と会話の文体が多用で変化に富んでおり、作品の表現を豊かにしている。

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