彝族の詩人・吉狄馬加について

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  • About Yizu Poet, Jidi Majia

抄録

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彝族の詩人吉狄馬加は一九六一年に四川省涼山彝族自治州で彝族の由緒ある家柄に生まれ、成都の西南民族学院で学んだ後、『初恋的歌』に収められる詩で文学界にデビューした。その詩は涼山の自然を詠う詩の他に、彝族であることの自己確認を果たすべく長く困難な道程を詠ったものである。吉狄馬加は青海省の宣伝部長を勤めたことがあるが、詩人としては彝族であることを抜きには考えられない。初期の代表作「自画像」では、家譜と民族の歴史をふまえ「わたし‒は‒彝族‒だ」と自己確認を宣言するが、後に書かれた「アイデンティティ」ではパレスチナの抵抗詩人であるマフムード・ダルウィーシュの「身分証明書」を思わせる内容で、自己確認の中に潜むことばのもんだいに触れ、さらに「引き裂かれた自我」では「名も知られぬ―涙にくれる動物だ!」と叫ぶにいたる。この深刻なもんだいはおそらく、詩人の中で、彝族の詩人であることと全世界の事象とを往還する道程があって初めて可能となるにちがいない。著名な詩人緑原は「真の詩人」と吉狄馬加を評している。

収録刊行物

  • 人文研紀要

    人文研紀要 94 57-81, 2019-09-30

    中央大学人文科学研究所

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