当院の全身麻酔管理下外科手術における周術期静脈血栓塞栓症発症の前向き研究 : チーム医療による取組みと成果

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抄録

近年日本でも外科手術例の肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism,以下PTE)が問題となり,その原因である深部静脈血栓症(deep venous thrombosis,以下DVT)が注目されている1)。中でも整形外科手術の人工股関節置換術や人工膝関節置換術ではDVT 発症はかなりの頻度で見られる2)。PTE とDVT は一連の病態であり,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism,以下VTE)と総称される。当院は急性期病院であり,手術症例が多いこともさることながら,重症でICU あるいはHCU 管理が必要となる患者,心筋梗塞あるいは脳卒中で歩行が制限されている患者,さらに抑制を必要とする入院患者が多数をしめ,先のVTE 発症の危険性が高いと推測される。当院では平成22年9月に医療安全に関する委員会が母体となり,医療安全管理室の医師および安全管理推進者,集中ケア認定看護師,中央検査部の検査技師およびエコー技師など多職種からなるVTE チームを結成し,平成21年4月から1年間に発生した肺血栓塞栓症について,診療録から後向き調査を行った。それらを踏まえて平成22年10月に市立函館病院独自の「肺血栓塞栓および深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」3),以下院内VTE 予防ガイドライン)を作成して,院内のDVT とPTE の予防に取り組んできた。ガイドライン作成後1年間が経過しても臨床現場ではVTE 予防が十分に実施されず,DVT とPTE の発生率も把握できていなかった。そこでVTE チームが現状把握に直接かつ積極的に参画することを病院の方針として,平成23年12月から外科手術症例の周術期VTE 予防およびVTE 発症時の治療介入に取り組み,VTE 発症の前向き研究を行った。今回はチーム医療として進めてきた当院の周術期における静脈血栓塞栓症予防と治療に対する取り組みとそれらの成果について報告する。

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