ヤスパースにおける「唯一無比の実践」としての哲学的思索―「内的行為」と「生の実践」―

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  • Philosophisches Denken als „eine einzigartige Praxis“ bei Karl Jaspers: „inneres Handeln“ und „Lebenspraxis“

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ヤスパースは,「哲学的思索は唯一無比の実践である」と述べている。本稿では,この一文を解釈することを通じて,ヤスパース哲学における独特な「実践」のありようを明らかにしたい。ヤスパースにおいて哲学的実践とは「内的行為」と「生の実践」にほかならない。「内的行為」においては自己自身とともに「存在があらわになる」と言われている。これはどういうことか。筆者はここに,後期ハイデガーの「存在の思索」を彷彿とさせるような〈存在の呼びかけに呼応する〉というモチーフを見てとるが,ヤスパースの場合,それが「生の実践」と密接に連関するというところに強い倫理的・実践的性格が見られる。こうした実践は,「時間の中で永遠性に触れる」ような高次の実存的・形而上的な「観想」にもとづく独特な「実践」であると言えよう。以上のように,ヤスパースにおける「実践」の哲学は,「永遠の現在」に根ざした宗教哲学的な色彩の強い独自の倫理学であったと解釈できよう。

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