ラス・カサスの「降伏勧告状」批判―懲罰戦争に対する神学的視座―

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  • Las Casas’ critique of the Notification (Requerimiento): His theological view point on‘ punitive war’

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スペイン語で「レケリミエント」と呼ばれた「降伏勧告状」は,スペイン人ドミニコ会士パラシオス・ルビオスによって1513 年に作成された法文書であり宣言文である。それによって,スペイン王室は西方インディアスと呼ばれた新発見地の支配とともに,同地域の先住民のキリスト教化も合法化することが可能となった。さらに,先住民がその受け入れを拒否した場合,「懲罰戦争」によってかれらを征服することも正当化された。  スペイン人ドミニコ会士,バルトロメー・デ・ラス・カサスは『インディアス史』及び『すべての人々を真の宗教に導く唯一の方法について』のような著作において「降伏勧告状」を法的・神学的根拠を欠く文書と見なし,酷評した。彼は特に後者において先住民の自然権を擁護しつつ,自身のスコラ学的見解に基づいてこれらの根拠を否定した。  本稿では,懲罰戦争に関する彼の神学的視座について解明することを目的とする。その際,彼の「平和的布教」論に焦点を置きながら,16 世紀スペインにおいて影響力を有したスペイン諸国王と教皇達の支配権論も参考に論じていく。そして,ラス・カサスの前述の著作を検証することで,彼はそのような無慈悲な戦争の行使が違法であるばかりか,神の救霊意志に完全に背馳するものであると確信したことが帰結される。つまり,ラス・カサスはその意志が神の善性から生じ,人種に関係なく全人類に及ぶと信じたのである。

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