夏季高温下でも景観性の高い苗物花き類の選定と利用技術の開発

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タイトル別名
  • Screening of bedding plants to tolerate hot conditions in summer and development of utilization techniques
  • カキ コウオン カ デモ ケイカンセイ ノ タカイ ナエブツ カキ ルイ ノ センテイ ト リヨウ ギジュツ ノ カイハツ

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説明

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という)は夏季に開催されるが,これまでこの時期の花苗の生産は少なく,利用もほとんどされていない。そこで,本大会での導入に向け,夏花の選定と利用技術の開発を行った。夏花の選定にあたって,約1,200種類の花きを調査し,7月下旬から9月上旬にかけて高い観賞性を維持できる種類を明らかにした。その結果,ビンカやペンタスなど250種類程度,全調査数のわずか20%のみが夏花として有望であった。和をイメージする夏花の中で,カワラナデシコとアサガオに注目し,開花特性を調査した。カワラナデシコ「スープラ」は,品種にかかわらずおよそ75日前後で開花したが,播種時期が遅くなるほど開花までの期間が短くなった。また,アサガオ「サンスマイル」は,5月上旬に播種することで東京2020大会の開会式(7月24日)近くに開花させることができた。また,多年生植物と水生植物のうち,多年生植物ではコレオプシス「ザグレブ」,ヘリオプシス「サマーナイト」などが,水生植物では熱帯スイレンとシラサギカヤツリが夏花として有望であった。一方,都市部での緑化における実用的な利用を目指し,耐暑性だけでなく,耐陰性や耐乾性を指標に夏花を評価・分類した。その結果,耐乾性の非常に強い植物としてイポメア,カンナ,ダイアンサスなどが,耐陰性ではニューギニアインパチェンス,ベゴニアなどが挙げられた。これらの情報は利用場面に応じた適正な花の選択に有益な情報となると考えられる。さらに,植栽・管理労力の削減を目指し,コンテナのサイズと種類を検討した。ダイアンサスとペチュニアのいずれにおいても,慣行のコンテナ10.5cmサイズと比較して,12.0cmサイズで植栽作業時間が短縮した。また,灌水労力の削減が期待できる底面給水型のプランターは培地中の水分変動が少なく,通常のコンテナよりも安定して水分を供給でき,かつ灌水回数を減らせた。このように本研究では,東京2020大会において会場や会場周辺を多くの花で彩るための有望な夏花の選定のみならず,植栽・管理労力削減技術といった利用技術の開発にも取り組んだ。これらの成果を活用することで,夏季高温期という過酷な環境下でも景観性の高い緑化を維持することが可能となる。

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