投資家は企業に何を求めているか : 持続的成長と「資本の効率的活用」
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- 田村, 俊夫
- 一橋大学
書誌事項
- タイトル別名
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- What Do Investors Want Corporate Managers to Do
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抄録
・ アベノミクスの「第三の矢」である成長戦略にあたる「日本再興戦略」では、冒頭部で「民間の力を最大限引き出す」ことを掲げている。そして、攻めの企業経営に向けた経営者の取り組みを促すために、株主の働きかけを期待している。その一環として制定されたのが「日本版スチュワードシップ・コード」である。・ ガバナンスには大別して「ブレーキ」と「アクセル」の2つの役割がある。従来は日本では、企業不祥事の防止やコンプライアンスといった「ブレーキ」の役割に注目が集まりがちであったが、日本再興戦略が投資家と社外取締役に、経営陣の背中を押して企業価値向上を促す「アクセル」の役割を期待しているのは、注目すべきことである。・ それでは、企業価値向上の「アクセル」になるような投資家の圧力とはどのようなものだろうか。本稿では、特にアクティビスト・ヘッジファンドを含む海外の本格的なバリュー投資家に焦点を当てて、投資家が企業価値向上のために企業に何を望んでいるかを分析した。それは一言でいえば「資本の効率的活用」である。・ 「資本の効率的活用」とは、株主と社会から負託された資本をフルに活用することであり、「資本利益率」を高めること、価値創造的な投資を行い、価値創造的に使い切れない資本は株主還元を通じて社会にリサイクルすること(「資本配分」)、事業ポートフォリオを常に見直して、本当に自分がこの事業にもっとも価値を吹き込んでいるのか、厳しく自問し続けること(「資本再配分」)を意味する。・ 経営姿勢としては、難しい課題に正面から向き合う「知的誠実さ」、外部の声に虚心坦懐に耳を傾ける「オープン」さを保ちつつ、株主の財産を委託されて運用する受託者責任意識を持ち、さらに踏み込んで、自分自身のお金であるかのように真剣に資本を扱う「オーナーシップ」意識を持つことが求められる。・ 日本再興戦略と日本版スチュワードシップ・コードにおけるガバナンス・ドリブンのアプローチは、投資家、社外取締役の圧力で企業価値向上を促す、従来の日本からは画期的なアプローチである。それが日本経済の中長期的課題にどれだけ実効性を持ちうるかは、企業と投資家、社会の「資本」に関する意識と行動の変革にかかっている。
収録刊行物
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- 資本市場リサーチ
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資本市場リサーチ 31 5-51, 2014-04
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050850490509336960
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- NII論文ID
- 120006926907
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- NII書誌ID
- AA1285312X
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- HANDLE
- 10086/31021
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles