米国エンゲージメントの新潮流 : 何を話すか、誰と話すか

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  • New Trends in US Engagement Practices: What to Speak and Whom to Speak to

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抄録

・ アベノミクス成長戦略の一環として制定された「日本版スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」は、中長期的企業価値向上のために上場企業と株主・機関投資家の間の建設的な対話(エンゲージメント)を求めている。しかし、従来エンゲージメントの経験に乏しい企業や機関投資家の中には、具体的にどのような対話を行えばよいのか、戸惑いも見受けられる。本稿では、近年、急激な変貌を遂げている米国エンゲージメント実務を分析し、今後の日本企業と機関投資家に対するインプリケーションを探る。・ 米国において機関投資家エンゲージメントが近年急速に進展している要因としては、特にアクティビスト・ヘッジファンドとSay on Pay が大きな役割を果たしている。アクティビストの台頭やSay on Pay の導入は、平時から大手機関投資家の理解と支持を確保する必要性を増大させるとともに、取締役がエンゲージメントの当事者となる舞台を整え、また大手パッシブ投資家の影響力を飛躍的に拡大させた。・ エンゲージメントを考える上では、「何を話すか」と「誰と話すか」が特に重要である。「何を話すか」(エンゲージメントの議題)については、かつての形式的ガバナンス問題中心から、経営戦略・経営の具体的方針や環境・社会問題にまで、機関投資家の関心が深まっている。「誰と話すか」については、米国では従来、会社を代表して外部とコミュニケーションを行うのは経営陣の責務と考えられ、独立取締役が株主と直接エンゲージメントを行うことは稀であった。しかし、近年、米国では機関投資家が取締役との直接の接触を求める動きが高まってきており、またそれが正当なものと次第にみなされつつある。・ 日本のコーポレートガバナンス・コードは、株主エンゲージメントに関して、米国の新潮流までカバーした先進的な内容を備えているが、米国のような企業と機関投資家の多様な意見のぶつかり合いや実務の試行錯誤を経ることなく「天下り的」に制定されたため、その「器」に中身を盛って実効性を高めていくのはこれからの課題である。今後、日本企業と投資家が中長期的企業価値向上に資するエンゲージメント実務を共同して作り上げていくうえで、米国の状況とさまざまな取り組みを理解することは、大いに参考になるであろう。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050850490539552640
  • NII論文ID
    120006926919
  • NII書誌ID
    AA1285312X
  • HANDLE
    10086/31010
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    journal article
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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