スチュワードシップは成長を促進するか : エージェンシー・キャピタリズムの新展開
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- 田村, 俊夫
- 一橋大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Does Stewardship Promote Economic Growth?
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抄録
・ 2014年2月に制定された日本版スチュワードシップ・コードは、機関投資家のエンゲージメントを通じて「当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促す」ことを目的としている。機関投資家によるエンゲージメントは本当に成長を促進することができるのだろうか。・ 本稿では、機関投資家によるエンゲージメント活動で先行する米国および英国の歴史と現状を分析することにより、機関投資家エンゲージメントが企業価値向上と成長促進にポジティブな影響を与える条件を考察する。・ 米英の従来の機関投資家エンゲージメントは、ガバナンス体制等の形式的問題や危機対応には成果を発揮してきたが、企業の経営方針に関する実体的問題については、コスト負担問題(フリーライダー問題)がネックとなって、実効性のある活動が十分に行えていなかった。その状況を変えつつあるのが、米国発のアクティビスト・ヘッジファンドによる集中投資型ビジネスモデルである。・ 他方で、アクティビスト・ヘッジファンドなど株主による経営関与が短期的経営を招くのではないかというショートターミズム論争も激化しているが、実体的問題提起者としてのアクティビスト・ヘッジファンドの存在が企業価値向上をもたらすか否かは、取締役会と機関投資家の見識次第である。・ 株式の機関化が進んだ米国、英国では、取締役会の受託者責任と機関投資家のスチュワードシップ責任を基軸に、年金受給者などの最終投資家の長期的利益のために行動する「エージェンシー・キャピタリズム」が深化しつつある。日本でも、日本再興戦略の描くグランド・デザインのもとで、日本版スチュワードシップ・コードと日本版コーポレートガバナンス・コードを車の両輪とするエージェンシー・キャピタリズム体制が姿を現しつつある。・ スチュワードシップが成長を促進する条件は、コスト負担問題を解決する実体的問題提起者の登場と、その提案を是々非々で判断する取締役会・機関投資家の見識である。最終投資家の利益が投資チェーンを駆動する健全なエージェンシー・キャピタリズムの育成こそが、機関投資家によるエンゲージメントを成長促進に結びつける鍵となろう。
収録刊行物
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- 資本市場リサーチ
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資本市場リサーチ 32 140-185, 2014-07
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050850490554044800
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- NII論文ID
- 120006809316
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- NII書誌ID
- AA1285312X
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- HANDLE
- 10086/31020
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles