[論文] ジェンダー,歴史教育と博物館 : 台湾での経験を例に

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  • [Article] Gender, History Education and Museums : A Focus on Experiences in Taiwan

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1985年,国連で正式に示された「ジェンダー主流化」の理念を受け,台湾では関連政策の制定も進んだ。そのなかでも,2012年に制定された「ジェンダー平等教育法」は,台湾の公立博物館に対して,収蔵・展示・研究,来館者サービス,人事などについて,ジェンダー平等の意識や原則を進めることを求めており,経営管理における原則の1つとされている。 しかしながら,台湾の博物館がジェンダーに関してステレオタイプの社会的価値観や歴史的思考への対応や反省を積極的に行っている主な要因は,国のジェンダー平等政策ではない。歴史学においてジェンダー視点を通じた歴史解釈の新たなパラダイムが熱心に探求されていることをふまえ,国立台湾歴史博物館におけるジェンダー問題への関心は,パブリックヒストリーの中で女性の姿をどのように描くか,特にそれをどのように収蔵し,展示するのかという点に集中している。たとえば,2003年「台湾女性研究計画」の策定をふまえ,2008年~2011年の「台湾女性の映像記録」では,オーラルヒストリーによって社会の下層や弱者の個人の経験を収集,記録,展示し,あわせて取材の現場やプロセス自体を歴史資料として記録するといった手法もとられている。このような試みは,女性に限ったものではないが,ジェンダー問題において重視される女性主体の叙述,多元的な歴史視点,女性は歴史に存在するなどの主張に呼応するものであり,多元的な歴史資料を収集するという新たな方法の開拓につながってきた。 歴史解釈の民主化を重視することは,戒厳令解除後の台湾における社会発展の特徴の1つである。パブリックヒストリーの重視もこのような社会的な背景のなかでおこなわれてきた。展示とジェンダ―についていえば,これまでの「私的」領域における成果を,いかに「公的」領域に戻していくのかが今後の課題となろう。

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