惟喬親王 「白雲の絶えずたなびく峰にだに」 歌の解釈 : 隠逸世界への視点と雲林院文化圏との交流を背景に

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タイトル別名
  • イキョウシンノウ 「 シラクモ ノ タエズ タナビク ミネ ニ ダ ニ 」 ウタ ノ カイシャク : インイツ セカイ エ ノ シテン ト ウンリンイン ブンカケン ト ノ コウリュウ オ ハイケイ ニ

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抄録

『古今和歌集』には、惟喬親王の「白雲の絶えずたなびく峰にだに住めば住みぬる世にこそありけれ」という和歌がとられている。この和歌について従来の解釈では、惟喬親王の出家後の悲痛な心情や孤独さを読み取るものが多かった。そうした解釈に対し、本稿では隠逸世界への視点と雲林院文化圏との交流を視座に考察していく。惟喬親王歌における「白雲」は、隠逸世界を象徴する景物としての側面を持っており、また彼の出家後の生活環境は、『菅家文草』におさめられている清和天皇への上表文によると「水石幽閑地」「煙霞晩暮家」というように、まさしく隠者が暮らすような場所であった。さらに彼が親しく交流していた雲林院文化圏は、常康親王の遁世の地であり、そこで編まれた漢詩集では「山人道士」「隠逸梵門」といった部類の作品が重視されたという。このように、惟喬親王は出家前後を通じて隠逸世界との関わりが深く、そのため彼の「白雲の」という和歌についても、そうした隠逸思想が強く反映されているのではないかと考えるのである。

identifier:KG002700010124

収録刊行物

  • 京都語文

    京都語文 27 155-176, 2019-11-30

    佛教大学国語国文学会

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