秋はなほ夕まぐれこそただならね荻の上風萩の下露 : 和漢朗詠集の秋の夕(秋興・秋晩)について

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抄録

道心厚い美貌の貴公子、藤原義孝の「秋はなほ夕まぐれこそただならね荻の上風萩の下露」は、秋の夕を代表歌である。黄昏時、秋風になびく荻の花穂、色つく萩の下葉の白露に、早逝した義孝の人生を重ね、愛唱されたのだろう。しかしこの歌は、歌自体に名歌としての力がある。平安人に一つの秋の美意識を作った白楽天の「暮立」詩を上の句で主題として言い切っている点、漢詩素材「荻」と和歌素材「萩」を初めて組み合わせ、「上風」「下露」と漢詩的対称表現で詠んだ点である。和漢兼作の才人義孝ならではのこの歌を、時を経て、同じく和漢すべてに通じる藤原公任が『和漢朗詠集』「秋興」に採り、その価値を決定付けた。

identifier:KG000300000314

収録刊行物

  • 京都語文

    京都語文 3 58-69, 1998-10-03

    佛教大学国語国文学会

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