魏志倭人伝にみえる生口の検討 (原田敬一先生退職記念号)

書誌事項

タイトル別名
  • ギシ ワジンデン ニ ミエル イキグチ ノ ケントウ
  • Study on Slaves in Gishiwajinden

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抄録

本論では『後漢書』東夷伝倭条の生口の記述とも対照しつつ、魏志倭人伝の生口に関して、中国史書・文献と考古資料とくに出土文字資料を参照して同時代的な位置づけを試みる。まず、生口に関する研究史を概観し、『漢書』『後漢書』『三国志』を中心として、生口の用例を概観し、その用法の傾向を求めた。その結果、『漢書』では異民族の俘虜を指し、その数の多さが重要とする価値観によっていることを示した。『後漢書』でも同様であるが、後漢代後半には生口に対価を設定する記述があり、それは三国時代以降に行われる生口の売買に先行する。加えて、新たに知られた走馬楼呉簡にみえる三国時代呉の生口に関する研究を引きつつ、この時点では生口が売買される対象であり、また官府に従属する場合があることを確認した。これらを踏まえて、倭の生口は上掲の中国史書に通底する俘虜としての価値感によっており、『後漢書』東夷伝にみえる倭国王の献じた「生口百六十人」から、魏志倭人伝では男女合わせて一〇人あるいは三〇人と変化しているのは、如上の漢から三国にかけての中国の生口の社会的、経済的位置の変容と連動しているとみた。

魏志倭人伝

生口

走馬楼呉簡

三国時代

俘虜

identifier:RO000900009211

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