『世間妾形気』巻二の一小考

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タイトル別名
  • 『 セケン ショウケイキ 』 マキ ニ ノ イチ ショウコウ

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抄録

上田秋成の『世間妾形気』は、従来より先行の浮世草子の影響が濃いことが指摘されている。本稿は本作における先行作品への近似について具体的に検証するものである。巻二の一は複数の女の噂話からなる前半部分と、二人の妾の有様を対比する後半部分とに分けられ、前半部分には、噂話の担い手として西鶴の浮世草子や『色道大鏡』にも言及される「月切」の女が選ばれている。また、後半部分は同時代に出た『風俗七遊談』と重なる記述があり、作者が先行の浮世草子と同様に当代性を備えた描写を目指したことが知られる。一方、前半と後半の間にある妾肝煎・お菊の「長談義」は同時代の談義本『教訓雑長持』と方法を同じくし、この話がお菊による当世の妾への風刺を主眼とすると考えられる。右の特色を持つ巻二の一の話中に、当時実在したと思われる人物が登場する箇所が存することは注目すべきであろう。『妾形気』においては先行作品との近似を前提としつつ、細部に織り込まれた事柄を読み取ることが課題となる。

identifier:KG002600009131

収録刊行物

  • 京都語文

    京都語文 26 44-57, 2018-11-24

    佛教大学国語国文学会

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