ジュニャーナガルバによるダルマキールティのアポーハ論に基づく因果論への批判 : 後期中観思想の形成(3)

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タイトル別名
  • ジュニャーナガルバ ニ ヨル ダルマキールティ ノ アポーハロン ニ モトズク インガロン エ ノ ヒハン : コウキ チュウカン シソウ ノ ケイセイ(3)
  • Jñānagarbha’s Refutation of Dhanmakirti’s Causation Based an Apoha Theory

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抄録

クマーリラによるディグナーガのアポーハ論への批判を受け、ダルマキールティは普遍(sāmānya) は実在しなくとも因果間の区別無区別に関する随伴関係が成立することを彼のアポーハ論により弁明している。すなわち、多因→一果に対する多因→多果、一因→多果に対する一因→一果からなる因果論の肯定的随伴(anvaya)、否定的随伴(vyatireka) を概念知によって区別を設けるアポーハ論により論じるダルマキールティの感官知の生起に関する四種の因果論は、ジュニャーナガルバにより悉く論難されている。それがシャーンタラクシタ、カマラシーラ、ハリバドラへと師資相承される後期中観派の四極端の不生起を立証因とする無自性論証である。そこではデーヴェンドラブッディの注釈も考慮され、またカマラシーラ、ハリバドラはシャーキャブッディによるジュニャーナガルバへの批判にも反論、弁明している。その論証に加えSDV ad SDK14 最後のAŚ (中間偈) には自、他などの四不生因を始め五無自性論証のすべての原型といえるものが出揃っている。したがって、まとまった形態による五無自性論証の定型化はカマラシーラより以前、ジュニャーナガルバにあったといえよう。また、付属的に仏教内外の他学派の学説も批判的に吟味されるが、五無自性論証のすべては有効力=実在=勝義に対し、それらを事物に過ぎないもの、実世俗を対立軸とするダルマキールティへの批判を通じ中観学説の正統性を立証しようとするものである。なお、SDV ad SDK13 では結果を設ける効力(arthakriyāsamartha)が実世俗であることを示すために随伴関係を確定するダルマキールティの「因果関係は直接知覚と無知覚により証明される」を論難している。

ダルマキールティ

Hetubindu

因果論

アポーハ論

ジュニャーナガルバ

identifier:BR010300009238

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