造型技術映画『ムクの木の話』の成立基盤 : 東宝のスタジオ史とスタッフ構成から (上)

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  • ゾウケイ ギジュツ エイガ ムク ノ キ ノ ハナシ ノ セイリツ キバン トウホウ ノ スタジオ シ ト スタッフ コウセイ カラ ジョウ

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千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第279集 『歴史=表象の現在』上村 清雄 編

"The Presence of History as Representation", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.279

本稿では、一九四七年に公開された短編教育映画『ムクの木の話』を取り上げ、そこに見られる、アニメーションと立体造型物を駆使した特徴的な表現と、その成立の基盤について論ずる。『ムクの木の話』は、ムクの老木が立つ荒野に「氷魔」と呼ばれる怪物がやってきて全てを凍りつかせるが、やがて太陽の光を放つ女神がそれを追い払い、平和な春が訪れる、という筋立ての、二〇分強の短編映画である。劇中、氷魔によって凍らされた木々が、雪中行軍する兵士の姿【図1】や、ナチスの鍵十字の形【図2】をとること、また西洋的な風貌の女神【図3】が魔物を退けるということなどから、戦時期の抑圧と、敗戦によるそこからの解放を表現した作品を考えられよう。技法的にはセル・アニメーションを基本としつつ、時おり立体造型物を用いた、コマ撮りによらない実写のシーンが挿入されることが、最大の特徴である。ムクの木のある荒野の遠景【図4】、凍りついた木々、一部の「氷魔」【図5】、女神像、また雪崩のシーン【図6】などで、立体造型物を用いたミニチュア撮影が行われている。アニメーション史研究者の佐野明子は、一九三〇年代から第二次大戦期にかけての日本では、興行主と観客の間で、アメリカ製のトーキー式セル・アニメーションの規範化が起こり、日本国内の商業分野で活躍する制作者はそれへの適応を迫られたこと、その一方で影絵アニメーションや人形アニメーション、抽象アニメーションなどは、批評家によってアメリカ製アニメーションとは異なるジャンルで論じられたことを指摘している。また、批評家の西村智弘は、一九五〇年代以前の日本におい…

p. 180の図版はリポジトリ未収録

source:歴史=表象の現在(2013年度)

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