豚の胃潰瘍に関する研究(第6報) : 試験豚における胃液のpH酸度およびペプシン活性
書誌事項
- タイトル別名
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- Studies on the esophagogastric ulcers in swine (6) : effects of dietary factors on the development of gastric lesions and on the acidity and pepsin activity of gastric juice
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説明
本学では,豚の前胃部潰瘍の発生要因を究明するため,組成および形状を異にする各種飼料を用いて前後2回にわたる飼養試験を行なった. その際われわれは供試豚の胃液性状を経時的に検索し, 胃病変の発現率ならびに胃液のpH,酸度およびペプシン活性に及ぼす飼料形状の影響について観察した.得られた結果は大約以下のとおりである. 1. 第1次試験における胃病変の発現率は 1区100%, 2区10%, 3区100%, 4区100%, 5区10%, 6区44%, 7区0% で,試験区間(すなわち給与飼料の種別による)の差が著しい.すなわち, 1・3・4区の病変発現率が最高であり, かつ病変程度も重度であった.第2次試験では,第1次試験で高発症率を示した1・3区と発症率の低かった5・2区とをそれぞれA・B・C・D区として試験を実施した. その成績はおおむね第1次試験の結果を再確認することになったが,ただC区だけは1次試験よりも高い発症率を示した. 2. 高発症区(1・3・4・A・B区) の胃内容物は概して流動性に富み, 反対に低発症区では固形部分が多く,液状成分は少なかった.有病変豚では胃内に胆汁の逆流を認めたものが比較的多かったが,このことは,発症豚の胃の運動(蠕動)が正常よりも低下していたことを推測させる. 3. 発症豚の胃液pHは試験の初期から低く推移し,無病変豚では高値で推移した.また胃液pHは給与飼料の種別により,明らかな差が認められた. 4. 胃液の酸度についてみると,発症豚では試験の初期から高値で推移し,無病変豚では初期は低く,試験日数の経過に伴ない次第に高くなる.試験区別(すなわち飼料種別による) の胃液酸度も,同じ傾向が見られた. なお,発症豚における遊離塩酸の検出例数は従米の報告に比し少なかった. 5. 無病変豚のペプシン活性は陰性のものが多く,病変が重度になるに従い陽性率が高くなった.重度病変豚では,試験開始後15~30日目に急激にペプシン活性が高くなるのを認めたが,このことから,ペプシン活性の高揚は本病発症の時期を示唆するものと考えられる. 6. 本病発症豚の胃液は酸度ならびにペプシン活性が高いが, 胃病変の発現に対する両者の役割については,まず塩酸が胃粘膜に作用して,それの変性を招き,次で引続き作用する塩酸およびペプシンにより,胃粘膜(胃壁)の病変が次第に重くなるものと考える.
収録刊行物
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- 宮崎大学農学部研究報告
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宮崎大学農学部研究報告 22 (1), 243-254, 1975-10
宮崎大学農学部
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050851739693236224
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- NII論文ID
- 120007121777
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- NII書誌ID
- AN00236503
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- ISSN
- 05446066
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- HANDLE
- 10458/2595
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles