注意欠陥多動性障害(ADHD)をめぐる動向:新たな研究法の確立に向けて

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タイトル別名
  • Neural Bases, Psychological Models and Treatments of Attention Deficit Hyperactivity Disorder (ADHD): Reviews and Prospects
  • チュウイ ケッカン タドウセイ ショウガイ ADHD オ メグル ドウコウ アラタ ナ ケンキュウホウ ノ カクリツ ニ ムケテ

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説明

注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意、多動性、衝動性を主症状とし、生物学的要因が土台となって発現すると考えられる発達障害である。この障害はてんかんの約20%に併発され、この場合、発作の制御によりADHD 症状が改善し、患者自身の自尊感情が上昇する。このようにADHD 症状には心理・社会的要因との相関があり、行動療法など、ADHD 児やその親に対する心理・社会的アプローチが有用である。いっぽうで中枢刺激薬などによる薬物療法が有効である。 現在、前頭前野や大脳基底核のdopamine機能異常を中心として、ADHD の神経基盤が議論されている。また、最近、noradrenaline再取込み作用の阻害がADHD 症状を緩和することが示され、この作用をもつ薬剤による治療が米国で開始された。Noradrenalineは注意機能に深く関与しており、今後の研究の展開が望まれる。神経基盤の研究においては動物モデルの開発が重要であり、現在、SHR をはじめとするモデルが示されている。新しいモデルとしててんかんモデル動物であるEL マウスが有用かもしれず、新たな可能性が期待される。さらに、従来のADHD 動物モデル研究ではおもにその多動性が着目されていたが、不注意や衝動性という認知機能をも十分に議論する必要がある。その試みとして、筆者はオペラント学習理論に基づいた行動指標を開発中である。これにより、さらに本質的なADHD の神経基盤の解明が進み、新薬開発に有用となる可能性がある。さらには、動物モデルにおいて(弁別刺激)反応強化随伴性とADHD 症状との関係が議論できることになり、より効果的な行動療法の開発へとつながると考えられる。

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