意思の自由と刑事責任に関する補足的覚書

書誌事項

タイトル別名
  • イシ ノ ジユウ ト ケイジ セキニン ニ カンスル ホソクテキ オボエガキ
  • Eine erganzende Notiz uber die Willensfreiheit und die strafrechtliche Schuld

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説明

本論稿は、拙論「行為決意の源泉―脳か心か・責任と刑罰に向けてー」駒澤法学第17巻1号および「答責(性)・帰責(属)・責任と意思の自由―脳科学を顧みてー(1)(2)(3)」駒澤法学第19巻2号/第19巻3号/第20巻1号を発表して以来、何か言い足りなさを感じていたことを、補足的に覚書としてまとめたものである。そこで、刑事責任と答責(性)および帰責の概念についてSollenとの関係を補足し、その上で、意思の自由を否定する脳科学者のニューロン決定論とそれに対する批判を再論してみたのである。特に、脳の機能を1元的に重視する脳局在論を批判し、心が脳に従属するという付随併発論も心を脳に還元する還元主義も排斥することをし直した。そのために、動物と同じ脳という器官を有しない植物の機能を垣間見て、この植物が有する知性を考えれば、知性と心は脳に依存するわけではないことを検討してみた。したがって、脳科学者が脳を全ての原因と考える「脳神話論」が1人称視座を無視して全てを物的な3人称視座で説明することの矛盾を追求した。その意味では、意思の自由に関しては、自然科学的アプローチでは説明しえない次元は、「心の科学」ないし「心の哲学」が必要であることを強調した。そして、この心と知性を有する「人」という単位体が、考え思索するのであることを強調した。刑事責任は、このような内心の世界と規範的要請とのかかわりの中で追求し検討しなければないという考えを補筆した次第である。

収録刊行物

  • 駒澤法学

    駒澤法学 21 (1), 20[59]-2[77], 2021-09

    駒澤大学法学部

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