Junior and Senior High School English Teachers' Dilemma

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  • 中学校・高校英語教師のジレンマ-アンケートによる一考察-

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2世紀以上にわたる徳川幕府の鎖国政策の後に、日本は1858年、日米通修条約の締結を余儀なくされた。この文明開化と同時に日本の英語教育の歴史も始まったといえよう。従って英語教育の歴史は百年以上にもさかのぼる。この間、種々の新教授法が外国から紹介され、また著名な教授たちが来日し、講演していった。しかし、そのような努力にもかかわらず、「日本人はリスニングとスピーキングがへた」というイメージは国内外に浸透している。中学校・高校と6年間も英語を勉強したのに、ろくに話すことも出来ず、また書くことさえ覚束ないという厳しい批判を英語教師は常に受けてきた。今日、英語教育のあり方について激しい論争がなされているが、これらの論争は実際に現場で教えている先生方のなまの意見、あるいは現状を無視して行われているのではないか。現場の実情を把握するために、関東、京都、北海道で教えている中学校の英語教師20人、高校の英語教師32人にアンケートをとってみた。まず最初に生徒の英語のリスニング、スピーキングが出来ない原因は、現在一般に用いられている教授法に帰するかという質問に、70%近くの先生が同意している。ではその教授法とは何か。中学校では20%、高校では66%の先生が、訳・文法を中心とした教授法が一般的に教室で行われていると答えている。これは中学校では口頭練習が重視されているが、高校では一つの型にはまった大学受験一辺倒の授業がなされていることを示している。またアンケートの結果、学年が上がるにつれて口頭練習にかける時間が減り、代りに訳・文法に授業時間の多くが費やされる傾向が示されている。では生徒のリスニングとスピーキングを向上させるにはどうしたらよいのか。70%以上の英語の先生が、現在の教育状況を何らかの方法で変えていく必要があると考えている。さらに70%の先生が、今よりもっと口頭練習に時間を使うべきであると認識している。@@@にもかかわらず、現実にはいろいろな制約のために出来ないというジレンマの状態にある。ではどのような制約があるのか、3つの観点から考えてみたい。第1に高校、大学の受験対策の影響がある。入学試験にはリスニングとスピーキングのテストはほとんど行われていないので、教師は訳・文法に授業時間の大半を使ってしまう。調査した英語教師66%が、高校、あるいは大学受験の準備のために授業活動が大きく制約されると答えている。第2の理由は、英語教師自身リスニングとスピーキングを教えるのに困難があること。リスニングとスピーキングを教える自信があると答えた先生は、中学校では40%、高校の教師ではわずか16%に過ぎない。これは高校の教科書が訳・文法中心に構成されているので、高校教師は教科書を用いてリスニングとスピーキングを教えるのが難しいと思っているからである。また多くの英語教師がリスニングとスピーキングを向上させるために、イギリスかアメリカに1年近く留学したいと述べている。最後に、これは英語教師に限ったことではないが、中学校、高校の教師はクラス運営、生活指導、クラブ指導、会議、運動会、文化祭の準備で毎日が多忙である。文部省は「ゆとりある教育」という理由で、昭和56年より中学の英語の時間数を週3時間に削減した。その結果、教師は前と同じ時間数を教えるために受け持ちクラスが増え、さらに忙しくなっている。およそ半数の教師が忙し過ぎて充分に授業の準備をする時間がないと言っている。口頭練習をさせるためには訳・文法を教えるよりも多くの準備時間が必要とされるので、教師は忙しさにまかせて慣れた訳と文法中心の授業をしてしまうのである。以上3つのどれをとってみても簡単に解決できる問題ではない。しかし今日の小さくなりつつあるあるいは複雑な世界情勢を考慮した時、英語教師はその責任の重大さを再認識する必要がある。いつまでも現実の問題を無祝し、机上の空論ばかりの論争では英語教育の現状は少しも変わらないであろう。何らかの具体的な対応策を考え、実施していく必要がある。

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