両唾液腺腫脹で発症した 抗ミトコンドリア抗体陽性の 2 症例

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抄録

抗ミトコンドリア抗体(AMA)は原発性胆汁性胆管炎(PBC)に特異性の高い抗体である. PBC はシェーグレン症候群(SS)などのリウマチ性疾患の合併をしばしば認め,非化膿性胆管炎を主病態とする自己免疫疾患である.今回両唾液腺腫脹で発症した AMA 陽性の 2 例を経験した.症例 1 は 57 歳女性,両顎下腺腫脹を主訴に受診,ドライマウスを認め,血液検査で胆道系酵素の上昇と AMA 陽性を認め,PBC および両側顎下唾液腺炎と診断した.症例 2 は 53 歳女性,両顎下腺の腫脹と疼痛を主訴に受診,血液検査で赤沈の亢進,AMA 陽性を認めたが,胆道系酵素の上昇は認めず,抗 SS-A 抗体は陰性であった.口唇生検では SS に合致する所見を認めたが,臨床的所見は乏しく,SS の診断には至らなかった.また血液生化学検査も形態学的にも肝障害を示唆する所見が乏しく,PBC の診断も確定できなかった. AMA の対応抗原の一部は胆管上皮細胞と唾液腺上皮細胞で発現を認め,サイトカイン産生亢 進を伴う自己免疫性炎症を惹起することが指摘されており,両症例でもその関与が考えられた. PBC は一般に AMA 陽性の非化膿性胆管炎と考えられているが,少なくともその一部では全身性に自己免疫性上皮炎をきたしていると推定される.

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