F. ショパンにおける「和声構造」の構築手法―《24の前奏曲集》作品28 第1番 ハ長調を対象として―

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タイトル別名
  • The Techniques that Create ‘Harmonic Structure’ in Frédéric Chopin ―With a Focus on the Prélude in C Major, Op. 28 No. 1 (from the 24 Préludes)―

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抄録

本研究はショパンの《24の前奏曲集》作品28を対象に、「和声構造」(楽曲全体の「ゆれ」)の構築手法を読み解くことを目的とする。僅か34小節から成る第1番は、およそ三部分に区分される。下属調を経過するが、主調のハ長調が大きく揺らぐことはない。そのため第1番の意義は、形式美や転調の妙技とは別のところにあると考える。そこで本研究は、とくに和音の「転位」と「偶成」に重点を置いて、第1番の分析を実施する。楽譜を読み解いてゆくと、右手の旋律には、様々な「転位」の技法が施されていることが分かる。その積み重ねが、緊張感を焦らしながらも、頂点に向かって大きなアーチ型の線を描き、やがて収束してゆく大きな旋律の枠組みとなる。この旋律の「緊張と弛緩」のドラマを推進してゆく上で、「転位」と「偶成」、そして幅の広い5声部書法が肝要となる。これらが織りなす三位一体こそが、第1番の「和声構造」の主意と言えよう。

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