スペイン戦争研究覚書
書誌事項
- タイトル別名
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- Research Note on the Spanish Civil War
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説明
スペイン戦争(内戦)勃発八〇年の研究状況をA・ビーヴァー著(二〇〇六年)、P・プレストン著(二〇一二年)の検討を通じて明らかにしたもの。このテーマのパイオニアH・トマスに続くイギリス歴史学の実証研究である。前者は、ドイツやロシアの公文書をも用いて、一九三六─三九年の戦争の経緯を主要な戦闘の分析を通じて浮き彫りにしたもので、軍事史家の面目躍如たるものがある。後者は、一九八六年に書かれた内戦史の総合的研究の著作を踏まえて、テロル、とくに勝利したフランコ側のテロルを徹底的に解明している。『スペインのホロコースト』というタイトルは、フランコ側のテロルが計画的・組織的だったこと、しかも一九三一年の立憲革命も三六年の人民戦線政府の成立も「ユダヤ・フリーメーソン・ボリシェヴィキ」の陰謀によるとするイデオロギー的主張がナチと酷似していたことを根拠に名づけられた。ユダヤ人大量殺害に固有の表現を拡張することに、またフランコ側のテロルを集中的に取り上げたことに対する反発もある。しかし、内戦のトラウマがなお深く、犠牲者の究明が最近になって本格化し、「記憶の戦争」が続いているスペインでは、意義深い研究である。
収録刊行物
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- 法学新報
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法学新報 124 (1-2), 301-329, 2017-04-28
法学新報編集委員会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050855809795109632
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- ISSN
- 00096296
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB